コーヒーの香りをかぐと、なんだかホッとする。
雨上がりの匂いで、昔のことを思い出す。
好きな香りをかぐと、気持ちが落ち着く。
そんな経験はありませんか?
私たちは毎日の生活の中で、意識している以上にたくさんの「香り」を感じています。
アスリートの感覚というと、「見る」「聞く」「体で感じる」といった、プレーに直接関係する感覚を思い浮かべるかもしれません。
でも、競技をするときに大切なのは、プレー中の感覚だけではありません。
緊張した心を落ち着かせる。
気持ちを切り替える。
休む時間に入る。
そんな心と体のコンディショニングにも、「香り」は関わっています。
香りはどうやって感じている?
香りの正体は、空気中を漂う小さな「においの分子」です。
鼻から入ったにおいの分子が、鼻の奥にある嗅覚受容体を刺激すると、その情報が脳へ送られます。
嗅覚の特徴のひとつが、記憶や感情に関係する脳の領域と深く結びついていることです。
だから、
「この香り、懐かしい!」
「この匂いをかぐと落ち着く」
と、一瞬で昔の記憶や感情がよみがえることがあります。
香りは、ただ「いい匂い」「嫌な匂い」と判断するだけの感覚ではないのです。
アスリートと「香り」はどう関係する?
試合前、緊張してドキドキする。
練習や試合が終わっても興奮が続いている。
思うようなプレーができず、気持ちを引きずってしまう。
アスリートには、こんな場面がたくさんあります。
そこで大切になるのが、ONとOFFの切り替えです。
香りだけでパフォーマンスが上がるわけではありません。
でも、自分が心地よいと感じる香りを「落ち着く時間」や「集中する前のルーティン」と組み合わせることで、気持ちを切り替えるきっかけとして利用することはできます。
「この香り=この時間」をつくってみる
たとえば、試合や練習の前。
いつも同じ香りを感じながら、深呼吸をする。
そして、
「よし、ここから集中」
と気持ちを切り替える。
反対に、練習が終わったらシャワーを浴びて、好きな香りのお茶を飲む。
「今日はここまで」
とOFFの時間に入る。
香りそのものに特別な力があるというより、香りをひとつの「合図」にするイメージです。
毎回同じ行動と組み合わせることで、自分なりのルーティンにもなります。
香りは「休む時間」にも
アスリートにとって、トレーニングと同じくらい大切なのが休養です。
夜になっても試合のことを考えている。
明日の練習が気になる。
体は疲れているのに、頭はまだONのまま。
そんなときは、照明を少し落としたり、スマートフォンから離れたりするのと一緒に、好きな香りを取り入れてみるのもひとつです。
お茶の香り、石けんの香り、植物や木の香りなど、特別なアロマを用意しなくても大丈夫。
自分が「心地いい」と感じる香りを見つけることがポイントです。
外に出て「香り」を探してみよう
香りを感じる練習は、難しいことをする必要はありません。
散歩をしながら、
草の匂い
土の匂い
花の香り
雨上がりの空気
パン屋さんから漂ってくる香り
などに意識を向けてみてください。
「今、どんな匂いがする?」
そう意識するだけでも、普段は気づかなかった感覚に気づくことがあります。
競技だけではなく、日常の中でいろいろな感覚に意識を向けること。
それも、自分の心や体の状態に気づくきっかけになります。
香りには好みがあります
ここはとても大切です。
「ラベンダーだから必ずリラックスできる」
「この香りなら集中できる」
と、すべての人に同じように作用するわけではありません。
好きな香りも、苦手な香りも人それぞれ。
強い香りで頭痛や気分不良を感じる人もいます。
また、チームの更衣室や公共の場所などでは、周囲に香りが苦手な人がいることも考えておきたいですね。
香りは、強くするのではなく、自分が心地よく感じられる範囲で取り入れましょう。
今日、ひとつ香りを探してみよう
普段は気づかず通り過ぎている「香り」。
今日は少しだけ鼻に意識を向けてみませんか?
朝のコーヒー。
外に出たときの空気。
体育館の匂い。
芝生や土の匂い。
お風呂上がりの石けんの香り。
そして、
「この香りをかぐと、自分はどんな気持ちになる?」
そこまで感じてみてください。
見る。
聞く。
体で感じる。
そして、香りを感じる。
私たちの脳には、毎日たくさんの感覚情報が入ってきています。
競技中のパフォーマンスだけではなく、緊張したり、集中したり、休んだり。
自分の感覚を知ることは、自分の心と体を知ることにもつながります。
次回は、五感シリーズ最後の
**「味わう」**について紹介します。
食事はアスリートにとって「栄養をとる」だけの時間なのでしょうか?
味覚と食事、そして心と体のコンディショニングについて考えていきます。


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