― 見えているだけでは足りない? ―
昨日の記事では、アスリートが競技中に使っている「感覚」について紹介しました。
今日からは、その感覚をひとつずつ見ていきたいと思います。
第1回は 「見る」 です。
スポーツでは、ボールを見る、相手を見る、味方を見る、ゴールを見るなど、たくさんの場面で「見る」ことが必要です。
でも、アスリートにとっての「見る」は、ただ目に映っているということだけではありません。
視力がよければ「見る力」も高い?
「見る」と聞くと、まず視力を思い浮かべるかもしれません。
もちろん、はっきり見えることも大切です。
でも競技中は、それだけでは足りません。
たとえばバスケットボール。
ボールを持った瞬間にも、
・目の前のディフェンスはどこにいる?
・味方はどこへ動いている?
・空いているスペースはどこ?
・ゴールまでの距離は?
・次に何が起こりそう?
など、たくさんの情報を見ながらプレーしています。
野球なら、投手の動きやボールの軌道、守備の位置。
サッカーなら、ボールだけでなく味方や相手選手、スペースの変化。
競技によって違いはありますが、アスリートは刻々と変わる状況の中から、今必要な情報を見つけています。
「一点を見る」だけではない
スポーツでは、目の前のものだけをじっと見ていればいいわけではありません。
ボールを見ながら、その周りにいる選手の動きにも気づく。
正面を向きながら、周囲の変化も捉える。
こうした周辺の情報を捉えることも、プレーするうえで大切です。
さらに、相手の姿勢や動きなどから、
「こっちに動きそう」
「次はパスが来そう」
と、次の展開を予測するための情報を得ることもあります。
つまり「見る」は、目だけで完結しているわけではありません。
見た情報を脳で処理し、判断し、体の動きにつなげる。
昨日お伝えした、
感じる → 判断する → 動く
につながっているのです。
上手な選手は「どこを見ている?」
同じ試合を見ていても、人によって気づくことが違います。
これはスポーツでも同じです。
経験を積んだ選手は、これまでの経験や知識をもとに、「次に何が起こりそうか」を考えながら必要なところへ注意を向けています。
だから大切なのは、ただたくさん見ることではなく、
「何を見るか」
「どこに注意を向けるか」
ということ。
普段の練習でも、「今、自分はどこを見ていた?」と振り返ってみると、新しい気づきがあるかもしれません。
「見る力」を高めるためにできること
では、スポーツに必要な「見る力」は、どうすれば高められるのでしょうか。
「視野を広げたい」と思う人も多いかもしれません。
大切なのは、ただ目を大きく動かしたり、周辺視野だけを鍛えたりすることではなく、周囲から必要な情報を集める習慣をつけることです。
たとえばバスケットボールなら、
・ドリブル中もできるだけ顔を上げる
・ボールだけでなく、味方や相手の位置も見る
・ボールを受ける前に周囲を確認する
・首を振って、コート全体の状況を確認する
・パス練習などでも周囲の動きを意識する
といったことを、普段の練習の中で意識できます。
特に意識したいのが、
「ボールをもらってから見る」のではなく、
「ボールをもらう前に見る」こと。
先に周囲の状況がわかっていれば、ボールを受けたあと、次のプレーをより早く選びやすくなります。
また、正面のものを見ながら周囲の動きにも注意を向けたり、プレーしながら別の合図を確認したりする練習も、「見る」と「判断する」をつなげる方法のひとつです。
ただし、実際のスポーツでは「見える」だけでは十分ではありません。
見つけた情報から、
見る → 気づく → 判断する → 動く
ここまでつながって、初めてプレーに活かされます。
特別なトレーニングだけでなく、いつもの練習の中で、
「今、どこを見ていた?」
「ボール以外に何が見えていた?」
と振り返ってみることから始めてみましょう。
日常の「見る」も大切に
そして「見る」という感覚は、競技中だけに使うものではありません。
空の色を見る。
木々の揺れを見る。
景色を眺める。
好きなものを見る。
練習や試合でたくさんの情報を受け取っているアスリートだからこそ、競技を離れた時間には、ゆっくり景色を見る時間が気持ちの切り替えにつながることもあります。
スマホの画面から少し目を離して、いつもとは違うものに目を向けてみる。
そんな時間を作ってみるのもいいですね。
今日、少し意識してみよう
今日の練習では、
「自分は何を見てプレーしている?」
と、少しだけ意識してみてください。
いつも無意識にしている「見る」に目を向けるだけでも、新しい気づきがあるかもしれません。
見る → 気づく → 判断する → 動く。
いつもの練習の中で、自分の「見る力」を感じてみてくださいね。
アスリートの感覚を考える5日間。
明日は 「聞く」 について考えてみます。


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