アスリートを支える“感覚”の話
スポーツが上手くなるために必要なものといえば、
筋力、体力、技術、スピード。
毎日の練習で、こうした力を一生懸命鍛えている人は多いと思います。
でも、試合を見ていると、ときどきこんな選手はいませんか?
「どうして、そこが見えていたの?」
「なんで、相手が動く前に反応できたの?」
「どうして、あの体勢から立て直せるの?」
もしかすると、その強さを支えているもののひとつが、
「感じる力」
なのかもしれません。
私たちは「感じながら」動いている
人は、周りの情報をさまざまな感覚から受け取っています。
よく知られているのが「五感」です。
視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚。
スポーツでも、これらの感覚は常に働いています。
相手やボールを見る。
味方の声や足音を聞く。
ボールが手に触れた感覚を感じる。
でも、アスリートにとって大切な「感覚」は、実は五感だけではありません。
五感だけじゃない!スポーツを支える感覚
たとえば、目を閉じていても、
「今、腕がどのあたりにあるか」
「膝がどのくらい曲がっているか」
なんとなく分かりますよね。
これは、体の位置や動きを感じる**「固有感覚」**と呼ばれる感覚です。
さらに、
ジャンプする。
回転する。
急に方向を変える。
着地して体勢を立て直す。
そんなときには、体の傾きや動き、バランスに関係する**「前庭感覚」**も働いています。
つまりアスリートは、
見る・聞く・触れるだけではなく、自分の体そのものを「感じながら」動いているのです。
トップアスリートは、本当に「感覚」が優れている?
では、競技レベルの高い選手は、一般の人や経験の浅い選手より「感覚」が優れているのでしょうか?
ここは少し注意が必要です。
単純に、
「トップ選手は目がいい」
「耳がいい」
ということではありません。
スポーツの熟練者と非熟練者を比較した研究をまとめたメタ解析では、熟練者の方が、競技に必要な手がかりを捉え、より速く、より正確に反応する傾向が報告されています。
また、視線の使い方にも違いがみられています。
大切なのは、
たくさんの情報を見ることではなく、「必要な情報」を見つけること。
そして、
感じる → 判断する → 動く
このつながりなのです。
「感覚」は鍛えられる?
ここも興味深いところです。
感覚や知覚に関わる能力の中には、トレーニングによって向上する可能性が示されているものがあります。
たとえば、チームスポーツにおける「予測」や「意思決定」を対象にした研究では、知覚・認知トレーニングによる改善が報告されています。
また、自分の体の位置や動きを感じる「固有感覚」を使ったトレーニングについても、バランスや敏捷性、姿勢の安定、ボールコントロールなど、さまざまなスポーツ能力へのプラスの影響が報告されています。
もちろん、特別な感覚トレーニングをすれば、それだけで競技が上手くなるというわけではありません。
それでも、
「筋肉を鍛える」「技術を磨く」だけではなく、「感じる力」に目を向けてみる。
これは、自分のパフォーマンスを考える新しい視点になるかもしれません。
「感じる力」は、試合中だけじゃない
そして私は、「感覚」は競技中だけに大切なものではないと思っています。
自然の中で風を感じる。
鳥や木々の音を聞く。
好きな香りに気づく。
食事を「おいしい」と感じながら味わう。
こうした感覚に意識を向ける時間も、競技から離れて心と体を整えるきっかけになります。
一生懸命頑張っているアスリートほど、
「鍛える時間」だけでなく、「感じる時間」も大切にしてほしい。
そんな視点から、明日から5日間、「アスリートの感覚」について考えていきます。
明日から「アスリートの感覚を研ぎ澄ます5日間」
明日からは、
DAY1 見る力|視覚
DAY2 聞く力|聴覚
DAY3 体を感じる力|触覚・固有感覚・前庭感覚
DAY4 香りを感じる力|嗅覚
DAY5 味わう力|味覚
の5つのテーマを取り上げます。
「見る力」は、本当に鍛えられる?
音は集中力やパフォーマンスに関係する?
自分の体を感じる力って何?
香りや自然は、心と体にどんな影響を与える?
「おいしい」と感じながら食べることには、どんな意味がある?
そんな疑問を、研究も紹介しながら一緒に見ていきます。
強くなるために、鍛える。
それと同じくらい、
自分の体や周りの世界を「感じる」。
いつもとは少し違う角度から、自分のパフォーマンスを見つめてみませんか?
明日はまず、
「見る力」から始めます。


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